光飽和点と光補償点
光合成する植物は、
段々光を強くすると光合成もそれにあわせて
多く行われる。
しかし、ある点を越えて多く与えても
光合成は多く行われなくなる。
これを光飽和点と呼ぶ。
逆に段々弱くすると、見かけ上、全く光合成
がないという状態になる。呼吸作用で、
光合成で作るエネルギー源を全部使うからである。
これを光補償点と呼ぶ。
秋の日除けを取る、少なくする時期は、
この光飽和点、光補償点の問題である。
ランによって、この光補償点が違うから、
ランの種類によって変えなければならない。
光の強さと光合成の関係を考えれば、
ラン栽培においても、光補償点に近いところまで、
光は強いほうが良いことになる。
このギリギリのところまで、光を強くすると、
葉の温度が、葉の乾燥などの問題が生じてくる。
この問題を少なくするのが「霧の光」・・・散光である。
だから、不織布を張ると非常にランは喜ぶ。
26000種のラン。
この一つ一つの光補償点が解明されていない。
だから、経験で、感性でランのシグナルを
見抜いて日除けを張ったり、除いたりする。
陽葉と陰葉。
ランも環境に適応するために、
ギリギリのところまで環境に順応する。
陽葉・・・・葉色は黄緑色になる。
斑入り葉では、斑が出る。
陰葉・・・・葉緑素が緑になるので葉は濃い緑になる。
斑入り葉では、より多く光合成するため、
葉緑素が多くなり、斑が少なくなり、
なくなったりする。
適当な光と簡単に言うけれども、
これくらい難しい事はない。
天気が一刻一刻変化するからである。
発光ダイオードで地下でラン栽培するなら、
出来るかもしれないが・・・・。
別な問題が出るかもしれない。
日除け資材の種類は・・・・
日除けを取るということの中には、日本の秋はランにとってに「充実期」という考え方がある。
これは四季の存在する日本の文化とも言える。
「実りの秋」。
この時期は温度較差が大きくなり、約10〜13℃にもなる。
前記の「太陽高度角」と温度較差が組み合って・・・・各地域の光と夜露が出てくる。
CAM型ランの場合は、この温度較差による「結露」・・・・夜露が・・・・光合成に関係するが、
四季のない国のカトレアにとっても、日本の秋の温度較差による、夜間の結露、空中湿度は、
相当自生地に近いものとなる。
カトレアにとっては・・・・束の間の「ホッ」とする・・・癒しの時間、空間かもしれない。
これは別な角度から看れば・・・・・
ベストな光条件であれば、最も収入が多く、支出の少ない季節である。
ランを栽培していても、四季のない、秋のないカトレアを栽培していても、
夏が過ぎて、さわやかな季節の9月は、日除けを取って光を当てると株が「充実」すると思う。
早目にとって上げれば・・・ランが元気、丈夫、充実・・・・どうしてもそう考えてしまう。
この早目の感覚とランの最適な光に乖離、ズレがある場合は、逆に株を痛める、衰弱させることになるのだが・・・・。
なかなか・・・・これの習性の修正が難しい・・・・。
日本人の四季のDNAである。
モンスーン気候の下で進化したランには、この感覚が見事に合う。
だから宇井清太はCymbidiumを作ってきた。
四季の変化である。
デンドロ、セロジネ、パフィオ、カランテ・・・なども同じDNAを持っている。
秋の充実・・・・。
9月の気候下で、バルブを形成するものが多い。
花芽も出てくる。
最適な光条件は、春までの長い期間の大切な技術である。
この期間のほとんどの管理技術に光は深く関係するからである。
冬の表日本と裏日本では、まるで管理技術が異なることになる。
貯蔵エネルギーで開花、休眠期を過ごすラン
休眠期?冬の期間も光合成を行いながら開花、生長するラン。
ランには多様な進化の方向があって、自生地の環境によって、
低温期、乾期の過ごし方はランそれぞれである。
ここに適当な「光条件」がランによって大きく異なることになる。
これまでの永年の栽培経験から、日除け資材はいろいろ開発された。
ダイオネットでもおおくの種類がある・
市松模様。
メッシュ。
銀色。
青色・・・・・
これは全部、光の量を少なくする考え方。
スダレ、キズリ・・・から出発したもの。
カトレア栽培では、市松織りのものが使われているが・・・・。
これは、隙間から紫外線がモロに葉に当たるから・・・・葉ダニの発生がある。
この下にでも、上にでも良いから不織布を一枚重ねると、ものすごく良い光条件になる!!
これなら、花は素晴らしく良い品質になる。
なぜなら、カトレアの自生地では、朝から何時間は霧が発生しているからである。
日除けを取るというと・・・・全部取ると考える人いるが・・・・
最低限、日本で作る場合は霧の光である。
異郷の地というのは、他の条件が悪条件になっているから、
少なくとも光条件のみでも、プロトコームが生きられる光にしてあげたい。
それから霧の湿度!!
霧のない温室に、市松模様のダイオネットでは、少し厳しい。
カラカラ・・・・SUGOI-neでは大失敗する。
やさしい光。
明るくてもやさしい光。
カトレアもそれを望んでいることが・・・・SUGOI-neで実証された。
光補償点をどうやって高くするかの問題である。
著作権所有者 宇井清太
冬至の太陽高度角は、
北と南、表日本と裏日本で気温は大きな差があるが、
太陽高度角にはそれほど大きな違いはない。
このことは、例えば北海道の冬の晴天と、
静岡の晴天の日の正午に温室に射す日光に
大きな違いがないことになる。
したがって、晴天の日の日除けは、ほぼ同じように
しなければならない。
問題は、雪降りの日、曇天の日の違いである。
日照時間の違いになるが、裏日本のような場所では、
時々ある晴天の日射に、逆に株が弱ることがある。
突然強い光を浴びることになる。
積雪地帯の冬は、表日本の日除け管理より
注意が必要になる。
日除けなしの場合は、冬に葉焼けを起こすことになる。
この場合不織布で散光にしておけば安心。
裏日本でも冬の雪降りでもダイオネットが必要なのは、
以上の理由である。
陰性植物のランは弱い光には耐えられるが、
突然の強い光には耐えることが出来ない。
光に順化するまでに3から5日必要である。
裏日本のラン栽培は注意を要する。
光の安定している表日本とは、異なる管理が
必要になる。
積雪地帯では・・・・
雪の反射光がハウスのサイドから入るから、
ハウスサイドに日除けをしなければならない。
この反射光は強烈、紫外線も強烈。
この光がランに当たればハダニが爆発的に
発生する。
この光条件では
「ハダニ」の発生はない。
ラン自生地の太陽高度角から推定した
遮光と、霧の光の散光を再現した。
この光条件は「イジメ」の栽培法ではない。
光ストレスを出来る限り少なくして、
光合成をより多く、呼吸作用をより少なくする
光環境である。
上の光で栽培したコチョウラン・
下 パフィオ
不織布で散光にした光。
紫外線カット
40%ダイオネット
不織布
この光であれば、どんなランも快適!!
この光が基本。
この光なら、冬でも光合成するランでも、
大丈夫である。
冬、休眠するランでも大丈夫。
一年中この条件下で栽培している。
紫外線の種類
UV−A 315〜400nm 地表まで到達
UV−B 280〜315nm 一部地表まで
到達。
UVーC 100〜280nm 大氣、オゾン層で
吸収。
地表まで届かない。
紫外線。
この紫外線のことがラン栽培で問題視されたことはない。
植物が約6億年前、海から陸上に上がった時、最も問題になったのが、
「乾燥」と「紫外線」であった。
それから今日まで、植物の進化は乾燥と紫外線対策の歴史でもあった。
乾燥と紫外線への防護対策。
多種多様な方向に進化した。
この対策が・・・ラン科植物ではほとんど導入されている。
これにとって、らん科植物は世界中いたるところに自生することが出来た。
ところが、植物は紫外線対策はほとんど完成しているから、
実際の栽培現場では紫外線をほとんど無視してる。
植物の葉は、太陽から降り注ぐ紫外線に万全の対策をしている。
紫外線の強い高山でも、植物は生きられる。
近頃まで、植物栽培、作物栽培において、光の中の紫外線をカットする資材はなかった。
だから、光全体を少なくしなければならなかった。
「遮光」「日除け」である。
しかし、近年、紫外線をカットするフィルムが農業用資材として開発された。
宇井清太は、このフィルムを使用してきたが、非常に調子がいい。
「ハダニ」が全然発生しない。
20年も消毒なし。
今年のような猛暑でも、夏負けしないで元気。
猛暑は温度の問題だけではなく、これに紫外線が加わってランにダメージを与えている!!
これは、実際に栽培してみないとわからない。
ランと紫外線の関係は、宇井清太が恐らく最初の実証例であろう。
葉に紫外線防護機能を具備しているから関係ない・・・・という考えは間違っているのではないか。
紫外線が少ない、弱い環境をランは要求しているのではないか?
ランにとって快適な光条件と、紫外線に耐えられるというのは同じではない。
紫外線はDNAを破壊する。
細胞は、エネルギーを使って痛んだDNAを修復している。
高温で株が弱れば、この修復が出来ない事態になる。
当然光合成が阻害されることになる。
遮光の中に紫外線カットを加えるのが正しいのではないか?
遮光という光の量のカットのみでは、ランは喜んではいない。
何よりも「ハダニ」が不妊症になる!!
これだけでも、ランの高温対策になる。
ハダニが発生した葉というのは高温に弱く、葉やけが簡単に発生する。
一つのことが、多方面に関係し影響する。
紫外線とハダニと葉焼け・・・・。
この負の連鎖をさせないことが、ラン栽培では非常に重要なことであるが、
これまでのラン栽培法では、ハダニが出れば薬を撒く・・・ということになる。
おかしいのではないか?
日除けを取る時期を間違うと、ハダニが大発生することもある。
更に、このような場合は、春の彼岸前に、温室内にハダニが大発生することになる。
それが数ヵ月後に「ナンプ病」の大発生につながる。
こういう負の連鎖のことが書かれている本はない。
日光不足と強光による光合成阻害
日除けを取り除くということの主な意味は、日光不足による「徒長」「軟化」「発色不良」などが懸念される
ために行われる。
日光を当てれば・・・植物は健康に育つという非常に短絡的な考えで行われることがある。
冒頭に書いた「葉焼け」が起きなければ、強い光を当てた方がランが丈夫に育つという考え方である。
陽性の植物を栽培してきた人は、ほとんど必ずこのような考えをもっている。
「徒長」。
この理由で、残暑厳しい時期に日除けを取る人が居る。
ランは陰性植物。
太陽高度角50度
この時期になったときに
紫外線カットフィルム
ダイオネット 40%
林床に自生するラン(地生ラン)には不織布をプラス。
太陽高度角50度の時期に二重に遮光していたダイオネットを取り除いている。
この光で徒長もしないし、花の品質は最高のものが出来る。
太陽高度が50度になる時期 冬至 12月23日 太陽高度角
東京 10月1日 30,7度
山形 9月23日 28,1度
札幌 9月15日 23,2度
仙台 9月23日 28,1度
水戸 10月1日 30,0度
前橋 10月1日 30,0度
新潟 9月25日 28,5度
長野 10月1日 29,8度
静岡 10月5日 31,5度
名古屋 10月5日 31,4度
京都 10月5日 31,6度
和歌山 10月10日 32,4度
岡山 10月7日 31,9度
高松 10月8日 32,2度
高知 10月10日 32,2度
福岡 10月10日 32,9度
長崎 10月12日 33,6度
熊本 10月12日 33,7度
鹿児島 10月15日 34,8度
ロサンゼルス 10月10日 32,6度
ニューヨーク 9月21日 25,9度
ロンドン 8月23日 15,1度
この50度はカトレアのワルケの自生地エリアの冬至の時の太陽高度である。
続く・・・・・
以上のように、科学には地球の何処の地点でも太陽高度が解かるように研究されたものもあるが、
全然解からない未知の領域もある。
植物では、分類学が相当のところまで網羅されているが・・・・
ラン菌のことはほとんど解からない未知の領域として残っている。
だから、ラン栽培は・・・今も手探り状態が続いている。
SUGOI-ne、宇井清太の新発見した「ラン菌」は、
その未知の領域にメスを入れるもの。
この科学的な意味の理解しないで、
SUGOI-neをただ単に、ランの用土としてのみ考えてアレコレでは、
SUGOI-neは何の意味もないことになる。
軽石、水ゴケとSUGOI-neを比較栽培?
そういう人居るけれども、比較栽培出来るほどの栽培技術を持っている?
そういうことである。
日除け一つで・・・・大きくデーターは違ったものになる。
潅水一つで・・・・試験以前の問題が出てくる。
葉の温度一つで・・・・。
だからラン栽培は奥が深い。
自生地の太陽高度一つ取っても・・・一冊の本になる。
まして、ラン菌のこととなると、一つ一つ手を汚して究明しなければならない。
膨大な株が必要になる!!
ここで面白いのは・・・
夏至の時の
東京の太陽高角74,5度
カリマンタン島 (パフィオの大型種の自生地)67,5度
赤道直下のカリマンタン島の方が
東京より太陽高角が約10度も低いのである。
更に南半球のカトレア、ノビリ、ワルケの自生地の
夏至を比較すると、東京の方が少し高いということ。
このことは、夏至6月22日の太陽の高さは、
東京がカリマンタンより、ノビリ、ワルケの自生地より、
高い位置の太陽の光が降り注いでいるということになる。
東京でのラン栽培。
以上のように光条件では、自生地より厳しい条件である。
熱帯地方の太陽より東京の太陽の方が、
厳しい光を降り注いでいる!!
だから、日本でのカトレア栽培は、日除けをしなければならない
多くのランにとって日本の夏は、自生地より厳しい光ですごさなければならない。
ロンドンの夏至と、カリマンタンの夏至が
ほとんど同じことに注目して欲しい。
ロンドンで赤道直下に自生するパフィオ、
カトレアを栽培出来るのは、この太陽高角の
為である。北国のロンドンでも光合成出来るのである。
秋分の日 9月23日では、
ロンドンでは38,5度。
正午の太陽は西の空に傾いて、光は斜めから射してくる。
この光でランは光合成しなければならない。
したがって、この光では日除けは無用になる。
こういうことが、なぜ起こるかといえば
地球が23,4度傾いているから起こる!!
赤道の太陽が高いということではない。
ダージリン、雲南の太陽が、夏至では高いのである。
カリマンタンでは夏至も冬至もほとんど同じ
高さに太陽がある(正午のとき)。
したがって、カリマンタン島を自生地にするパフィオを
栽培する場合は、相当錯覚する場合が出てくる。
カリマンタン島の冬至の太陽高度を見れば、
東京の9月下旬とほぼ同じ。
これだけ見れば、9月下旬に日除けを取っても良いと考えて しまう。
ところが東京には散光にする「霧」がない!!
宇井清太が冬に不織布を張るのはこのためである!!
ラン栽培の先進地イギリス。
この栽培法が日本に導入され、日本のラン栽培の基礎になっている。
カトレアのノビリの自生地の光。
夏至の時の太陽高度より、春分の日の太陽高度が高い。
こういうことがあるのである。
こういう厳しい光条件で生きるには身体を小さくして耐えなければ
ならない。それでも生きられるのは雨期があるからである。
熱帯地方にも太陽高度の差があり、
熱帯エリアに自生するランにも開花期が定まっているのは、
太陽高度差による四季のような変化と、
雨期乾期が定まったサイクルになっているからである。
表のワルケの冬至と夏至の太陽高度参照。
ラン栽培で遮光は常識。
この常識化している日除けの理由が、相当勘違いで行われていることがある。
「葉焼け」するから「日除け」をしなければならない。
では、「葉焼け」しなければ・・・・遮光はしなくても・・・良いのか?
そういう疑問が出てくる。
この考えにたって遮光を行う人は、9月の光条件を間違うことになる。
9月になると「葉焼け」しなくなるからである。
だから、日除けを取ることが・・・素晴らしくランに親切なことをしていると勘違いする!!
ランは人間の・・・この身勝手な・・・・急激な・・・・作業についてゆけない。
自然界には、一日で、数時間で・・・このような光の量、質の変化などおきないからである。
9月23日
秋分の日。
太陽は赤道をはさんで北回帰線、南回帰線の間を移動している。
地球の傾きによるもの。
北半球では北回帰線上の地点で「夏至」の時太陽は天頂を通過する。
この日から北半球では日が短くなり秋分の日に昼と夜の時間が同じになる。
「暑さ寒さも彼岸まで」。
実に日本の四季の変化を言い表した名言である。
秋分の日から冬至。
冬至から春分の日まで。
この秋分の日〜冬至をはさんで春分の日までの180日の期間。
この期間の「日差し」の問題がラン栽培における「遮光」の問題である。
秋分の日の日本各地の太陽の入射角。
この正午の入射角がランの葉の温度、日焼けに大きく関係する。
更に、この入射角は、温室の屋根の勾配に深く関係する。
温室の屋根の勾配が、冬至の日の入射角と90度であれば、
温室内に最も多く光が入るからである。
多く光が入れば、当然温室内は温まることになる。
暖房機のない時代。
温室の屋根の勾配は大問題であった。
温室メロンのスリークオーター温室は、このことから計算されたもので。
温室の向きと屋根の勾配が、見事に太陽エネルギーを最大限に利用したものである。
ところが・・・・
日本には温室メロンという・・・・温室園芸の最高の技術がありながら、
このことがラン栽培に大きく取り入れられてはいない。
温室の向き、方向も。
屋根の勾配も。
当然植物園の温室は、光、太陽エネルギーの問題よりも、
見た目のデザインである。
光も、エネルギーも・・・・カネを掛ければ・・・・・どんな設備も可能である。
実際の栽培現場では、でも、ラン栽培では、秋分の日〜春分の日までの光をどうするか。
これが非常に大きな問題である。
宇井清太もこれで・・・・大きな問題に直面したことがある。
温室の向きで・・・・まるで日除けを取り除く時期も、意味も異なるということである。
温室を南北棟にするか、東西棟にするか・・・。
南北棟にすると東面の屋根には日の出からの光が温室に入ってくる。
東西棟にすると、11時から午後1時頃までの光が南面の屋根から入ってくる。
まるで、全然異なった遮光の考え方をしないと、大失敗につながるのである。
これが、冬のランの葉の温度に大きく関係し、
換気を始める時間まで大きく違ってくる。
10000人の温室があれば、10000の差異、変化がある。
これが、温室である。
この変化、差異の始まりが・・・・9月である。
更に、ランには秋を感じるものもあれば、秋を感じないものもある。
秋と、冬があり、子孫を継承するにギリギリの温度のエリアに自生するランにとっては、
開花時期、種子を完熟させる時期は最も重要なことである。
更に、永年生き続けるランにとっては、己も生きてゆかなければならない。
このようなランにとっては、秋というのは、種子を完熟させると同時に、
来年も生きるためのエネルギーをも蓄えなければならない。
更に、来年の春の花の分化もしなければならない。
この重要な時期が9月、10月である。
ランの開花期というのは、地球の各地のサイクルから生きるには・・・・ギリギリの逆算で、
導き出されたものである。
特に四季のあるエリアに自生するランでは・・・・。
本に・・・・日が弱くなるから「日除けを取る」・・・・と簡単に記されているけれども、
実は、やがて来る冬の温室の管理にも、大きく影響して来る。
光は葉のある植物の光合成の絶対のものであるから、
日除け、遮光の意味を間違って解釈するととんでもないことが起こる。
宇井清太のところにも、9月に入ると日除けの相談が毎日頂くが、
中には、8月下旬、9月早々に「日除け」を取った・・・・という人も居る。
これが、相当多いのである。
秋分の日どころか、秋分の日より1ヶ月も早い!!
このときの太陽の正午の時の角度は何度ある?
山形の寒河江市は約北緯38度。
北回帰線の北緯は23、4度
北緯38度の山形の8月下旬の太陽高度は?
この太陽高度は・・・・南半球の赤道に近いところ・・・・カトレア、ノビリの自生地と同じくらい。
この太陽高度から考えれば、熱帯雨林の雨期に、一日に中に、
森の、林の木の「葉」が「落葉」することなどない。
日除けを取るということは・・・・自生地であれば・・・・一日で葉が全部落葉するということ!!
こんなこと、自然界ではありえない!!
まして、常緑照葉樹林というのは、一年中枝に葉がついている!!
一日で、この葉が落ちた・・・・聞いたことがない。
こういうことが歴史で一度だけあった。
ベトナム戦争の米軍における「枯れ葉作戦」である。
ゲリラが隠れている森の葉を「除草剤」を空中散布して、樹木を丸裸にした。
ベトナムの・・・・パフィオは・・・このとき、強烈な光の紫外線の洗礼を浴びた。
つまり、日除けを取るということは・・・・この「枯れ葉作戦」と同じこと。
ランから見れば・・・・・
8月、9月というのは、ほとんどのランにおいて、
自生地では、深い葉陰と深い霧に守られて生きているのである。
ここまで書けば「日除け」の意味も取り去るのが良いのか、悪いのか、
取るとすれば・・・・何時ごろ良いのか理解出来よう。
光で植物を分類すれば、
陽性植物
陰性植物
この二つに分けることができる。
陽性植物というのは、植物進化の中で、光の争奪戦で「勝組み」になったものである。
陰性植物というのは負け組みになったものである。
ランの自生地は、他の植物も生息する場所である。
ほとんどのランは、森、では新参者。
光条件の良いところは、先達の植物が既占領しているところである。
新参者のランに残された場所は、先達植物が見捨てた場所である。
光においても同じである。
多くの光を求めるとすれば、樹の上の枝、他の植物が生きられない場所になる。
非常に厳しい生き方を覚悟しなければならない。
多くの光を求めない・・・・覚悟を決めれば、森、林の下草として生きられる。
木漏れ日を拾って生きる道である。
オコボレ頂戴の生き方である。
9月という日本の季節の変わり目というのは、
前記したように太陽の光の変わり目でもある。
太陽高度角が、秋分の日を境にして、段々と冬至に向って低くなる。
つまり、斜めから日光が射すことになる。
葉の受ける光の量は少なくなる。
ランには比較的多くの光のところに自生しているもの。
林床に自生しているもの。
この違いがあるから、多くの原種を栽培している人は、9月の光は悩ましくなる。
日除けの時期を微妙に変えないと、大きな失敗につながる。
一気に日除けを取れば・・・・・喜ぶランもあれば、泣くランもある。
このとき、安心できるのは不織布をはって「散光」にすることである。
これなら、一気に取り去っても、霧の光だから・・・・大きな失敗は防げる。
「明るいがランにやさしい」・・・光になる。
自生地でプロトコームが生きられる光を再現できる。
日本のランの栽培、本の原点は、
イギリスのランの本の「翻訳」から始まっている!!
イギリスは樺太より北の北緯45度より北。
イギリスの秋分の日。
その日の太陽高度は?
そのイギリスのラン栽培法を基準にして、日本の栽培法が・・・・今も書かれている。
東京の北緯。
東京の9月、10月、11月、12月は、本当に光がランにとって不足するのか?
紫外線カット、不織布で散光にすると・・・・
一年中同じで栽培出来る。
光の強さは太陽高度角と標高(太陽に近い)と密接に関係する。
夏に逆戻りをさせないためには・・・・・
日除けを取ると夏に逆もどりの・・・・光条件になることがある。
取る時期の目安は?
ランの自生地の北緯、南緯を調べれば、365日の日の出から日の入りまでの分単位の
太陽高度を調べることができる。
宇宙のの法則というのは大変なものであるが、このわずかづづ変化するものを、
植物は敏感に感じ取り、そのサイクルに合わせて生きつづけてきた。
日除けというのは「葉焼け」するから行うのではない。
葉焼け対策は光管理の一部分でしかない。
例えば、ランには赤道直下の高山に自生するもの多いが、このようなランの遮光は、
エクアドル、カリマンタン島の夏至の正午の太陽高度を調べ、標高を調べ、
紫外線の強さを調べれて行う必要がある。
太陽高度角
9月23日 正午(秋分の日) 12月23日 正午(冬至) 6月23日(夏至)
南半球2月23日
北半球
札幌 46、4度 23、2度 69,8度
東京 53、9度 30、7度 77,2度
山形 51,3度 28,1度 74,6度
石垣島 64,3 41,3度 79,6度
ロンドン 38、5度 15,1度 61,9度
雲南 67.0度 約 43.9度 84度
カリマンタン 87,5度 約 64,4度 67,4度
エクアドル 約82,4度 約 60,1度 カトレアの自生地) 73,8度
南半球
シドニー 79,5度 55,9度 66,1度
ノビリ 約 80,5度 約 58,1度 ( カトレアの自生地) 72,8度
ワルケ 約70,5度 約 48,3℃ (カトレアの自生地) 75,2度
(国立天文台 天文情報センター 歴計算室 参照)
世界中の緯度、経度を調べれば、一年中の太陽高度角、方位が検索できる。
ラン栽培の光は太陽光なので、絶対知らなければならないこと。
これが解かれば、日除けの問題は理解出来る。
本を読まないで・・・・自分で研究、想像すること。
この太陽高度を知らないで、自生地に行っても、ランの本当の姿が見えない。
90度に近いほど、真上から光が射してくる。
多くの光が葉に当たる。
葉の温度が高くなる。
日焼けが起きやすくなる。
熱帯雨林の葉、霧が・・・・・自生地では光を遮る。
この光では足りないランは・・・・カトレアに見られるような場所を探す。
以上の太陽高度角から考察すると
冬至の時の太陽高度の比較(南半球は夏至)すると
ロンドンでは15,1度
カトレア、ノビリ、ワルケは58,1度、48,1度である。
エクアドルでは・・・・60,1度である。
緯度によって太陽高度はこのように差が出てくる。
ロンドンでは地表から15℃の角度に冬至の日の正午に太陽がある。
日本でなら夕方の4時頃の太陽。
このときの日差しなら・・・・当然ロンドンでなら遮光などいらない。
ところが東京では30,7度。
この角度が悩ましい。
遮光が必要なの必要でないのか?
エクアドルは60度もある。
これだけ見れば、当然遮光は必要ない。
そう錯覚する。
ノビリ、ワルケでも58度、50度近い。
東京の秋分の日は50度。
自生地の冬至(夏至)の高度と東京の秋分の日の高度は同じになる。
当然遮光はいらない!!
こういう計算から・・・・・・9月に日除けを取る・・・・という栽培法が出来た。
日本のラン栽培法は関東を基準にして、ランの種類では「カトレア}を基準にしている。
ランの本を見てください!!
必ず目次の最初に「カトレア」から書かれている。
カトレアがランの「女王」とか。
だから、本を編集する時、何の考えもなく編集者はカトレアを最初に持ってくる。
こういう編集をするから・・・・
ランは「カトレアい始まってカトレアに終る」と想っている人が出てくる。
カトレアからラン栽培を始めた人は、他のラン栽培では・・・・非常に苦労する。
光への考え方が・・・他のランに通用しないからである。
だから、SUGOI-neでもカトレアの人が多く失敗した。
カトレアというのは、ランの中では最も「簡単「」なものだからである。
相当「雑」な環境でも・・・よく耐えてくれるからである。
カトレア栽培では、微妙な「感性」が磨かれない・・・・からである。
奥の深さがないからである。
これが花にも表れる!!
表層の美しさになる。
氷山の一角という言葉があるが、80%見えないところが・・・・。
表に出る美しさが20%。
蘭展で10日飾るにはイイが・・・・それより長いと・・・・飽きられる?
宇井清太のCymbidium蘭展。
80日間である。
飽きない!!
なぜだ?
Cymbidiumが最も宇宙の摂理、法則を体内に宿しているからである。
四季の変化。
雨期乾期。
長日短日。
・・・・・・無葉ラン・・・・・まで進化。
太陽高度角の変化をCymbidiumは・・・・DNAに組み込んでいる。
Cymbidiumの日除けの時期は・・・・簡単には記すこと出来ない。
「鉢物Cymbidium」なら・・・・どうせ「消費」されるからどうでも良いのであるが・・・・
この消費されるランの・・・・栽培法と、本当の栽培法というのは異なるのである。
現在は、ミソもクソも混同されている!!
カトレアの光の管理は、他のランには厳しい。
モンスーン気候の熱帯雨林、亜熱帯、温帯の光条件と、
多肉植物化したカトレア自生地の光条件では、
パフィオ自生地の太陽高度はほとんど同じであっても・・・・
光の「質」が異なる。
この光の「質」を考えないと大きな間違いになる。
東京の霧のない場所と、霧の発生するラン自生地の光では、光の質が異なる。
だから・・・・不織布で散光にすると非常にランは喜ぶ。
イギリスではガラスに石灰乳を塗って・・・・散光にした。
上手いこと考えたものである。
ダイオネットのない時代は・・・日本もそうやった。
宇井清太はファイロンに塗った。
今は、不織布という非常に良いものが出来た。
日本の9月は気候が激変する。
その上、日本列島は南北に細長い。
植物栽培の本は東京、関東を基準に書かれているから、相当調整しなければならない。
更に、ラン栽培では、乾期の遭遇、寒さに遭遇することを予測したDNAを備えたランがある。
微妙に9月の季節に対する反応が種類によって異なる。
最も栽培管理者の能力が問われる時期である。
SUGOI-ne栽培で、最も大きい差が出るのもこの時期からである。
その栽培条件の一つに「日除け」を取り除くということがある。
時期を誤ると、せっかく元気に育ったランが弱る場合もあるので、
日除けのことを考えて見たい。
SUGOI-neの潅水にも深く関係するからです。
栽培講座
日除けを取る時期について
宇井清太
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